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zoom RSS 『死神の精度』 by 伊坂幸太郎

<<   作成日時 : 2005/07/12 20:56   >>

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久しぶりに出た伊坂幸太郎の新作!やっと読めた!(^^♪
この人には珍しい短編だ。しかもミステリーではない。「死神」が見取った(もしくは見送った)人々の短い物語。死神といえば今人気の漫画、『DEATH NOTE』を思い出すが、どうしてこう『死神』って感覚がずれていてシュールで面白いんだろう。むかし私が聞いた死神は・大きい鎌を持って・幽霊の親戚みたいなもので・黒い頭からかぶるマントをはおり・顔は骸骨で・人知れず有無を言わさず魂を奪っていく・・・とまあ、悪の権現みたいなやつだったが。なんだか最近の死神は、かわいい(笑)
ときには「死神稼業もらくじゃねぇ」みたいなことまで言わせている。上司がいて、部署があって、まるで会社と社員だ。そういえば地獄も今で言えば裁判所みたいなものだ。むかしから人間はあの世までも人間社会になぞらえることで「理解可能な世界」にし、安心を手に入れてきたのだろうか?
主人公の死神こと「千葉」は、死ぬ8日前にその人に接触し、調査をし、可=死の報告をする。情に流されて見送り=不死にすることはない。あくまでも観察し、『判断」の上でしか「見送り」にはしないし、大抵は「可」にする。普通ならこんだけかかわったら情が移って死なないように報告するだろ?と思うようなところでもそのまま「可」にする。ここがよくある小説モノとの違いだろう。
ともあれ、これは人間のおろかさやバカらしさを人外=死神の目から見て皮肉ったというような物語でもない。むしろ死神の挙動言動がズレていて、可愛いくらいに面白い。漫才みたいだ。さらに、やはり伊坂作品の醍醐味、「つながり」があちこちに点在して面白い。あのシーンがこのシーンにつながるのか、とか。あの人がこの人だったのか、とか。
もうひとつ、特徴的なのはどの話にも「死ぬシーン」がないということだ。「可」を出したのだから、その人物がその後死ぬことは確実なのだが、どう死ぬか、どんな死に様かは一切かかれていない。人間がどう死ぬかなんてたいした問題ではないのかもしれない、そんなきもしてきた。この物語の主人公たちは、(一人を除いては)死ぬ前の8日間、死ぬとは思いもしない人たちが、平気な顔して何かしらをやっている。それを私たちが、死神の目を通してみている。
人間はいつ死ぬか分からない。よくある話では、「だからこそ一生懸命に毎日生きなくてはいけない」となるのだろうが、いやもちろんそれはそうだし作者もそう言いたかった所もあるかもしれないが、
私はむしろ死ぬ8日前でさえ、人間は平気な顔して生きていられるしたたかな生き物なんだということだ。死神の仕事の精度と同じだけ、人間の死の精度も生の精度も、変わらないのである。


死神の精度
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『死神の精度』/伊坂幸太郎 ◎
感情もなければ痛覚もない死神が唯一つ、現世で愛するものは「ミュージック」である。死神は、仕事の現場(人間界)に出ると仕事の合間を縫って、CDショップで音楽を視聴する。 死神は、寿命でない死を迎える人間を査定して、その人物の死の可否を担当部署に報告し、その死を見届ける。『死神の精度』は、そんな死神の私が出会った幾つかの死の判定の物語だ。 ...続きを見る
蒼のほとりで書に溺れ。
2007/03/10 23:32
『死神の精度』/伊坂幸太郎 ◎
感情もなければ痛覚もない死神が唯一つ、現世で愛するものは「ミュージック」である。死神は、仕事の現場(人間界)に出ると仕事の合間を縫って、CDショップで音楽を視聴する。 死神は、寿命でない死を迎える人間を査定して、その人物の死の可否を担当部署に報告し、その死を見届ける。『死神の精度』は、そんな死神の私が出会った幾つかの死の判定の物語だ。 ...続きを見る
蒼のほとりで書に溺れ。
2007/03/11 21:21

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは。空蝉草紙さんの記事がとても素敵なので、TBをさせていただきました。
人間は死ぬ8日前ですら、平気な顔して生きていられるしたたかな生き物、そうなんですよね。
私は死神・千葉の飄々としたキャラクターにとても惹かれました。
水無月・R
2007/03/10 23:31

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