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zoom RSS 永遠に眠る〜No2

<<   作成日時 : 2006/03/31 19:17   >>

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「富子もいい年なんだから、もう少しおしゃれっ気のある化粧しなさいよ。」
眉毛をかいただけで口紅一つつけずに玄関へ向かう私を尻目に、母がありがたい忠告をする。近所のケーキ屋に買いに行くだけだから、と言って私は聞く耳持たずに家を後にした。
いい年なんだから、という言葉を向けられるようになったのはいつからだったろう?
少なくとも10代のうちはそんな言葉の影も見えなかったと思うが、さすがに27にもなって化粧一つしない娘が心配にもなるのだろう。
もちろん、いくらそういったことに鈍感な私でも、お出掛けするときとか人に会うときとかなんかはそれなりの化粧もするけれど、近所のオバサンやケーキ屋の店員に気を使うほどの女らしさを私は持ち合わせてはいない。
肌にしみや皺の一つでも出来ればさすがにファンデーションくらいはするようになるのだろうけれど、幸い今のところその兆候はない。もっとも、母や姉のように肌の色も白くなく、顔も体系も性格も心身ともに男っぽい私だ。皺が出来たところでゴミがついたくらいにしか思わないかもしれないが、そんなことを言ったらシワ隠しに躍起になっている世の女性たちと化粧品メーカーに集団リンチされるかもしれないので伏せておこう。
普通、女も30に近くなれば美容に対する意識は高くなる。それは10代の若者がする「見せるための+@」なオシャレというより、化粧が「隠すための必須項目」になりつつある頃合だ。
ずっと今のままでいられればいいのに、ずっとこの肌の張りと艶が維持できればいいのに、とそんな風に普通は思うのだろう。歳をとることへの恐怖。肌年齢が気になり、年齢が重なる毎に、「ああ○年若返りたい」と思うようになる、それが当たり前なのだろう。
しかし私にとってそんなことはどうでも良かったりする。
いや、歳をとるのが恐いのは同じだ。ただ私が恐いのは、シワの数や肌年齢や歳を重ねる、つまり老いるといった一般的なものではなくて、何も達成できずに迎えてしまうであろう『その年齢の自分』を見る日が近づいてくるということだ。
締め切りが近づく作家の心理に似ているなと、ふと思う。
コレに関しては説明しだすと長くなるので、まあ、それはおいおい。

まずはケーキを買わなくては。
そもそもなぜこんな朝早くからすっぴんで近所のケーキ屋まで買いに来たかというと、今日は母の誕生日なのだ。60も過ぎた母にとって今さら誕生日が嬉しいというものではないだろうけれど、ケーキが食べられるならまた一つ歳をとったことも気になるまい。
いつも行きつてのケーキ屋に入るとアルバイトらしい高校生くらいの女の子2人がレジにたっていた。高校生がこんな時間にバイトをしているのは春休みだからだろう、入ってきた客(といっても私だが)に目もくれず、昨日のドラマの話やら彼氏がどうしたとか女子高生にありふれた話をペチャクチャ。確かに学生にとって春は1年で1番何もすることがない休みである。
いつか私も、こんな若々しい女子高生を目の前にして「あの頃に戻りたい」などと思うときが来るのだろうか。

さて、ケーキは母と父と私とで3人分。姉が10年前に嫁いでしまったから今、我が家は3人しかいないのでたとえ誕生日であろうとクリスマスであろうと、滅多なことでは丸いケーキは買わない。第一、誕生日ケーキだといって蝋燭を立てるにせよ、母の歳の分・・・65本も立てるスペースがあるとは思えなかった。
「すいません、サバラン一つと、チーズケーキ一つ、あとは・・・」
母はお酒が入ったタイプが好きだからサバラン、私はいつものチーズケーキ、さて父には何にしようか。ふと見るとケースの一番上には「本日のお買い得!」と題して「イチゴのムース200円!!」というpopが張ってあり、ケースに並ぶムースは、それはもう可愛いデコレーションだった。
「あと、このイチゴのムース一つ。それでお願いします。」
会計を済ませてケーキの箱を受け取る時、今日ケーキを買いに来たのが父ではなく私であることをこの店は感謝して欲しいと思った。かりにも食品を扱っている店の販売員が、たとえバイトであろうと付け爪をしネイルアートをゴテゴテに施した手で食品を扱っているのを見たら、この店には2度と来なくなるだろう。いや、それどころか店長を呼んで来い、と怒鳴りつける可能性のほうが大きいか。
店を後にして私は、このままでは店員ではなく私が父に怒られるということに気づいた。
父は、ムースが嫌いなのだ。

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