■空蝉草紙■

アクセスカウンタ

zoom RSS 『司法戦争』 by 中嶋博行

<<   作成日時 : 2006/04/21 01:21   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

画像
本格的にリーガルサスペンス、というものを読むのは初めてだったのだけれど、割とすんなり入り込めたことに、まず幸運だ。
法廷モノ、裁判モノは小難しいのでたいてい途中でダウンしてしまうんではないかと思っていたけれど、意外とそうでもない。この小説に限ってかもしれないが。
警察モノでも報道モノでも何でも、こういう特定の「場」を題材にとったものって、
必ず「コレってどこまで本当なんだか」という猜疑心が生まれる。
あまりに突拍子もないことだったり、あんまりにもとんでもない事件だったり実態だったり・・・
ファンタジーなどとは違って、あくまでも事実、現実に起こりうる事として書かれているのだからかえってどこまで本当でどこまでフィクションなんだかわからない。
事実は小説よりも奇なり、なんていうけれど。

この作品にしてもやはりとんでもない深層が裏の裏の裏に隠れていて、灯台下暗し、まさかの真犯人が最後に暴かれる。
話はどんどんでかくなり、とうとう日米問題、国際問題か・・・と思いきや、結局は個人の逆恨み。もちろん本人(秋月)としては自分が自分と同じ境遇の者たちを代表している、代弁者である、そういった心持なのだろうけれど。
でも最後にあるように、彼のやったことは正義でもなんでもなく、人殺しでしかない。
よく代弁者という肩書きを好む自称代表者が(特に政治家や被災者)多いけれど、私はこの「代表」という言葉、「代わりのもの」というのが、嫌いだ。
誰かに代わってもらって、言い切れるほどの憎しみなり苦悩なりなら大したことないだろう?
自分でも言い切れないほどの苦悩や不幸は、きっと他人なんかで代弁できるものであるはずがないからだ。
だからやはり、彼は結局自分のためだけにああした方向に進んでしまっただけだとしか言いようがない。
で、主人公・女判事(調査官)である真樹はといえば、ちっとも心の葛藤が、弱さが、迷いや決意が何も伝わってこない。そもそも彼女を駆り立てる熱源は何か?そういったキャラクターの魅力付けも背景も、殆どない。
以前読んだ『凍える牙』でも感じたけれど、どうしてこう、女性エリートが主人公の小説っていやみったらしいんだろう?
読んでいてむかむかする。いらいらする。
どんなにエキスパートでも、男に馬鹿にされないような女でも、どうしてもどこかコンプレックスを抱いている雰囲気がある。
男性作家が書くと、女であることの不快感や男性社会へのコンプレックスを抱いた女になる。
女性作家が書くと、上と同じかもしくは宝塚なみの男のような女になる。
実際社会に出ればまだまだ男女平等ではないとか、色々な意見があるのだろうけれど、
いちいちそんなことに「女であること」を大袈裟に取り出している態度が気に食わない。
女として言わせて貰えば、フェミニズムだなんだと男女平等を大声で叫ぶ奴ほど一番男女差別を思っているんじゃないかと、思う。
まあ、そんなことはどうでもいい。

とにかく、この作品は面白い。ただキャラクターとしてはつまらない。
それでも秀作だと思うのはやはり綿密な書き込み、精密な描写、練りこまれた筋書きの性だろう。人間を除いてはまさにこういうのを本格派って言うんじゃないかと思う。

司法戦争
司法戦争 (講談社文庫)

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
『司法戦争』 by 中嶋博行 ■空蝉草紙■/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる