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zoom RSS 『精霊の守り人』 by 上橋菜穂子

<<   作成日時 : 2007/08/25 01:16   >>

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深夜アニメやその予告放送を何度かチラチラ観た時から気になっていた作品だった。
主人公の女用心棒バルサは、その容姿・強さ共に十二国記の陽子を思い起こさせたし、国の継承問題などが絡んだ上、ファンタジー=謎と不思議をたんまり含んだ空想世界のお話であるということが私の興味をそそった。 その上数人から勧められたとあっては読まぬわけにもいかない・・・で、文庫化したものから読む事にした。で,まず一作目『精霊の守り人』

この作品の何が面白いかって、やはりそれは構成とそのパーツ。つまり登場人物や世界の構成や、その世界に用意された歴史と神話、そして全体の起承転結がしっかりしているのだ。
ただし同時にあいまいにしてある・・・というかしっかりしてるけど詳しくは決め付けない余裕を持たせている。ファンタジーにおける余裕、それはすなわち私達に想像力を働かせ、各々の世界を作れといっているに他ならない。それが魔法の国であろうと、パラレルワールドであろうと、夢の世界であろうと未来であろうと、一切がファンタジーというこの世界に内包され優しく支えられるのである。
主人公バルサはかつて生き延びるために死なせてしまった人々の償いに用心棒をする伊達女。三十路を過ぎた恰幅の良い女性・・・というキャラクター設定も微妙な位置で面白い。
これを読む子供には「お姉さん〜お母さん」の幅を利かせ、同世代にとっては微妙なその年齢におけるもどかしさを感じ、より年上の方々からは魅力ある大人1年生である。
いずれにしてもほっとけない、あるいは憧れ、あるいは共感し見守り見つづけたくなる主人公なのだ。

さて、お話としては・・・お国のため良からぬモノが憑いている第二皇子が父である王により暗殺されんとしている。その用心棒をする羽目になった女バルサは王の追っ手から逃れんと過酷な逃避行を始める。途中、幼馴染のタンダや師のトロガイの助けを借り、皇子に憑いたモノ=精霊の正体を探っていくが、それはどうやらこの国の建国神話に端を発する重大な秘密が絡んでいるようだった。果たして皇子は助かるのか?この国はどうなるのか?

とまあ、そんなところ。前半引き込み部分のストーリーとしては『激突!徳川家光の乱心』だったかな、ちょっとマイナーだがこの時代劇映画によく似ている。よくありがちといえばありがちな、お家騒動モノの犠牲者たる世間知らずの温室育ちっ子が外の世界に放り出され諸国を回り戻ってきて王位に付く・・・といった類の昔話、すなわち貴種流離譚だ。
後はある種の冒険物語であり、戦闘シーンあり、伝説と神話の入り混じるファンタジーであり・・・なのだが、その皇子とバルサの成長物語であることに間違いない。

バルサは己の血なまぐさい過去と、それに対する償いとを秤にかけて生きてきた。そしてそうしているうちにただ闘いを求める闘鶏のごとくになってしまったと、自らを嘆く。
皇子チャグムはなぜ寄りによって己が精霊になどに憑かれなくてはならないのかと、自らを呪う。

「いいかげんに、人生を勘定するのは、やめようぜ・・・金勘定するように、過ぎてきた日々を勘定したら虚しいだけだ」   「これまでずっと人の命を金に換算して用心棒をやってきちまった。だからいくど命を救っても、ちっともすっきりしなかった」

このコトバに、この物語での成長がすべて集約されているように思う。
自分の過ちや過去への償いに終始して終わってしまう人間がいる。
完全な『公平』などあるわけないのに、それを必定として自らに訴えるものがいる。
人間は何かと比較し、突出した富も貧も許さない狭量の生物だ。そんな悲しいサガを背負いながら生きている・・・悲しいことだけれどまずそれを認めることから始めなくてはいけない。
本書はそういった第一歩を私に思いつかせてくれた、大切な作品である。


精霊の守り人 (新潮文庫 う 18-2)
精霊の守り人 (新潮文庫)

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