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zoom RSS 『T.R.Y.』 by 井上尚登

<<   作成日時 : 2007/10/10 00:13   >>

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外国、とくに中国や韓国にあって日本にないもの、それは革命であり移民の軋轢であり植民地化(被征服)されたという屈辱的歴史である。 
明治維新のような「改革」はあっても「ひっくりかえる」ことはなく、第二次世界大戦の敗戦でアメリカにより「保護国」とされその支配下に置かれたわずか短い歴史はあってもその中に虐殺があったわけではない。日本人人種自体が移民との混血人種であっても、明らかに姿かたちが違う異質さを持った異邦人がこの国の1割の上を行ったことすら一度もない。

だから日本人にはどうしても中国革命のような己の人種の存在場所そのものを、死守もしくは勝ち取らねばならないという危機感が解らない。
愛とは失って初めて気がつくもの・・・などというのは恋愛を語るに使われる常套句だが、愛情に限らず何事も、失って初めて気がつくものだ。
そして日本人は「日本」というものを歴史的観点から見て、失ったことがいまだ無い。
そんな日本人である私に、この作品は本当の意味で受け止め切れていないのかもしれない。
おそらくこれを中国革命当事者や客家が読んだら、まったく違った感想を違った箇所に感じるであろう。私には流せなかった涙を流したのかもしれない。

だから、正直に言おう。私はこの作品をノンストップの逆転劇、騙し騙されあいのミステリ&アクションである・・・として大変面白く拝見した。
キャラクターがたっている。恰幅のイイ姉さん、三国志の関羽顔負けな革命家の豪傑、なんともいじらしい犬;武丸、美人で謎を秘めたヒロイン・・・そして主人公は日本とロシアと中国を股にかける詐欺の名人「伊沢修」。
誰も彼もが特徴的で、悪役もしっかりワルモノをしている。地位や名誉に奔走する猜疑心にまみれ、足の引っ張り合いをする官僚たちの姿は『踊る大捜査線』の警視庁上役の方々の姿だし伊沢のお人よしかつ無鉄砲なtrying精神は「青島」そのもの・・・このあたり織田祐二と映画のために作ったんじゃないか?っていいたくなるようなプロットだ(笑)
そんなだからおもしろく、アクション映画を見ている感覚で楽しめる。ワクワクする。
本来は「ワクワク」は不謹慎すぎる話なのだ・・・このワクワクを作るために用意された歴史的背景、彼ら客家たちの民族の歴史はあまりに痛い。

時は1911年。上海。刑務所内で暗殺者に命を狙われるかつての詐欺師、伊沢修は、中国の革命家・関に助けられ、革命の片棒担ぎに協力させられる羽目に。伊沢の任務は革命のための武器を詐欺でもって日本官僚から騙し奪い取ること。脱獄し関達とともにとてつもない無謀な武器奪取計画を繰り広げる。騙し騙され奪い奪われる武器と信頼。 結末まで目の離せないスリルとスピードに満ちた痛快作品である。
ただ、余裕があれば少し振り返って、彼ら中国人の・・・客家たちの歴史と無念を今一度勉強して欲しい。いやしてみたいと思う。

第一九回横溝正史賞を受賞した超大作。

T.R.Y. (角川文庫)
T.R.Y. (角川文庫)

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