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zoom RSS 『王様は裸だと言った子供はその後どうなったか』 by 森達也

<<   作成日時 : 2008/01/25 00:25   >>

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森達也といえばオウムでおなじみ(笑)の「A」。
彼の選ぶ題材、取り上げる現象、そしてその作品からして、さぞや念入りな調査と詳細な裏づけをとり、物事を判断し、物事の深層を追及する人物なのだろう・・・と思っていた。
しかし、そんな印象を良い意味でも悪い意味でも払拭してくれる作品が、本書である。

王様の耳はロバの耳、王様は裸だ、そう、無邪気に何の遠慮も無く言い放った子供はその後、どうなったか?・・・その「子供」こそが森達也自身を投影している。
余談だが、私は「心の闇」というニュースコトバが嫌いである。
不条理な事件、痛ましい殺人、変態としか言いようの無い奇行・・・
常任には理解しがたい事件が起こると、報道はその実情はもちろんのこと、加害者(もしくは被害者)の評判や人柄、生い立ちや環境を調べ上げ高名な心理学者だの元弁護士だのを引っ張り出し、
心理分析やらなにやらいかにもそれらしい薀蓄を羅列する。
そうして出来上がった犯人・加害者像をドラマチックに仕立て上げ、「この加害者はどうしてこんな行動をとったのか?なぜこれほど無残な仕業をしたのか?」など余計なお世話としか言いようの無い「理由」「動機」を作り上げる・・・さらには捏造すらする。

そうして断言するならそれはそれでまだ思い切りが良い。人の意見だからまあ、自由とも言える。
しかしひっぱりだした意見分析諸々に収拾が付かなくなったり象徴的過ぎたりすると、また当たり障りの無いことしかいえない事情があると、ニュースのコメンテイターたちやゲストの皆々様方は決まって「現代の心の闇ですね〜」 と、一言付け加え、 一拍置いて 
「では、続いてのニュースです。」とさっさと移る。 なんと身勝手、やりっぱなし、無責任。

日本人にはわからないことが発生すると、その事象・出来事に「命名」し、理解したことにして不安を払拭するという「癖」がある。(日本人に限ったことではないかもしれないが。)
たとえば「妖怪」「幽霊」「神」の類。 昔の人は雷が鳴れば雷神様が・・・、風でスパッと切れれば「カマイタチ」・・・、人知を超えた出来事に妖怪や神の名を被せてそれらを「理解」し「不思議なし」として安心を得た。
 この「心の闇」というのはまさにそうした妖怪となんら変わりは無いのではないか?

理解しがたく複雑な人間の心理、それが暴走し事件を起こそうものならとても説明・解明できるものではない。ましてやニュースは「NEW S」、毎日新しい複雑怪奇が次々と飛び込んでくるのである。当然一所に分析やら説明やらを割いている時間はそうはない。たとえご立派な意見があろうとも番組内ではそれを言うことはご法度でありタブーであることが多いのであろう。なにしろ視聴者はタブーを好む日本人なのだ。
短時間で煙に巻いてそれらしくその報道を締めるためのコトバ「心の闇」便利で不愉快な装置である。

そうしたタブーをあっけらかんと言い放ち、なんなく切り込めるのが森達也の素晴らしいところだ。

本書はいくつもの有名な文芸作品をモチーフに、何度でもいつの世でもくり返さす人間の過ち、そのおろかさをユーモアたっぷりに描いている。
権力に臆することなく王様は裸だ、といった子供はその後成長し・・・。自衛と戦略、どっちでもない(どっちでもある)コウモリ=傍から見れば同じことをくり返す戦争のおろかさ。
そうした人間の愚かしい行動が人間のサガ、男女のお決まりごとであるならまだ微笑ましい。
しかし人間の「くり返す過ち」、特に戦争や宗教がらみは、たいてい圧力や集団、つまり「公」による強迫観念、プロパガンダが意図的にも無意識にも起こすことが殆どだ。
やらねばやられるという強迫観念もおなじこと(ふるやのもり)。赤鬼の挙動不審に不安を煽られやられる前にやる、という暴挙に走る民衆=集団脅迫観念による行動。(泣いた赤鬼)

実に様々な、解りやすい昔話を使って、我々現代人に見せ付けてくれる。
ただただ素直に現実に即し、いっそリアルに蘇る名作たちは、御伽噺の中では見せない・・・いや隠されていたユーモアと明確な共通性を提示してくれる。
本書が面白い!と素直に喜べる所以である。


王様は裸だと言った子供はその後どうなったか (集英社新書 405B)
王様は裸だと言った子供はその後どうなったか (集英社新書 405B)

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