![]() こんな本を読んでいるならさぞイエモン(イエローモンキー)に詳しいロック好きなんだろう、と思われるかもしれないが、実は殆ど知らない(笑)なにしろ曲は聴いたことはあっても、多分それがイエモンの歌だとか、吉井和哉の曲だとか認識して聞いたことは一度も無いからだ。 ロックの分野に好きなバンドが少ない私だが、まあ、縁あってこの本を読むことになった。 全体的にインタビューの答えをそのままダラダラと書き綴った体裁の文章。 吉井和哉の生い立ちからロックと出会い、バンド結成と結婚と解散、ソロ活動となる今に至るまでを書き垂れているだけ・・・というと辛らつかもしれないが、文章的にはそんな程度だ。 ただその分リアリティがあるなとは思う。稚拙な文章、なぁなぁな言葉、面白みの無い言い回し。 でも人間って実際にしゃべる時ってこんなもんだ。だから、おしゃべり・独白・回顧録を聞いているつもりで読めばよい、そういう本だった。 吉井和也という人間を私はあまり知らない、いや、知らなかった。 私自身、品性良好・・・とは程遠いが田舎娘らしくあまり外れたこともせず至極まともに(???)育ったため、彼の少年期はともかく、自由奔放に堕落しきった性生活、女関係のだらしなさや責任感のなさは理解の範疇を超えている。そういうしようもない男がいるってことはわかるし裏の世界やら危ない世界というわけではないから、解るけれど、関わりたくないし多分一生、別世界で終わるだろう。 例えるなら、ヘビメタが大好きな若者が演歌や歌謡曲を聞くことがありえないように・・・。 ところがだ。彼の少年期、生い立ちの部分ではっきり「歌謡曲が好きだった」ことが描かれている。 彼のルーツであるとさえあるから驚きだ。 彼の父が流しの旅芸人もどきであったとか、住んでいたのが北区・・・のいわゆる下町であったとか。 おばあちゃん子であったとか、なんとなく昭和のノスタルジーを思わせる少年期がうかがわれる。 そうした家族の喪失感と欠落による欲求不満が全面に書き連ねられている。 母の愛に飢えていたとか、早くに父(26にて死去)を亡くしたとか、どうしようもない喪失感が常に渦巻いていたとか、そうした告白が多々見られる。 正直、読んでいる方はこの自伝に心酔するか、ウザイと思うか、どちらかだろう。 ちなみに私は後者。こんなにどうしょうもなく堕落した男・・・手の悪さ、弱さを親の喪失感のせいにして、しかも自分自身奥さんと子供に半ば同じことをしているこんな男の告白自伝なんて気持ち悪い!としか言いようが無い。 ・・・なのに、なぜか。最後まで読み続け、最後のあとがき部分で感動してしまったのには不覚(笑) 親もその又親もまっとうな人からみたらどうしようもない人生で、そうした人間は寂しくて淋しくて淋しい人同士が集まってしまって、やっぱり寂しい子供が出来て。そうした悪循環みたいなもののなかで、彼はやはりダメな父親だ。ダメな亭主で、ダメ男だ。 こんなにけなすとファンからは怒られるだろうけれど、この自伝はそれを赤裸々に語っているんだからいいだろう。なによりそんなダメっプリをくつがえすだけの感動させる音楽を作り出したのには違いないのだから。 彼は自分自身に酔っている。不幸な生い立ちだとか、ダメ男だとか、容貌だとか音楽的才能だとか、すべてひっくるめて自分自身のドラマに酔っている。だから家族のこと、特に父の不在や母の愛への渇望をいつまでも引き摺って、引き摺っているかわいそうな自分をこれだけ語っている。 でも人間、そんなもんなのかもしれない。すくなくとも意地を張らずにそれを認めている彼は、イイ。 自分自身の人生にきっとまったく関わらないであろう一人の人間の告白を、面白く拝見した。 最後の最後のページ、自身の子供達へ送ったであろう詩だけでも、読んで欲しい。 失われた愛を求めて―吉井和哉自伝
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