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zoom RSS 『ヘルマフロディテの体温』 by 小島てるみ

<<   作成日時 : 2008/09/08 08:43   >>

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ナポリという名は誰もが知る有名な地でありながら、その歴史も町並みも今そこに生きる人々さえも、観光案内にのっているうわべでしか私たちは知らない。陽気な街、活気のある観光地・・・。しかしどうだろう?
本書の舞台「ナポリ」は明らかに私たちの知るあのイタリアの有名な港町ナポリであるはずなのに、どこか異郷の地を匂わせ中世のファンタジックな雰囲気を醸し出している。
登場するのは性転換をして女として生きる道を選んだ男だった者たち、フェミニエロ。更に生まれながら半隠半陽雌であるヘルマアフロディテ。彼らが今現実のナポリにどれほど実在するのか、またそうした性転換者たちにどれほど寛容な国なのか、そんなリアルな統計など私は興味が無いし、知りたくも無い。
著者はこれほど「一般」離れした人間たちを描き御伽噺を鮮やかに詠いながらも、最後までそうした人間たちに新たな「種」として生まれ来る意味と未来を与えている。
望まれるのは真実と確信させる現実的事実でも歴史でもなく、真実と信じることのできるだけの壮大な物語。男であれ女であれ・・・例えそれがヘルマアフロディテであれ、一人一人、心と体、今この時を作り出した膨大な過去のhistoryである。

美しい母は男になって父と息子シルビオのもとを去り、シルビオは母の裏切りと背徳を許せない。憎しみと反比例するように女装を始める彼の前に、生まれながらの両性具有者ゼーダ教授が謎解きと物語の作成を命ぜられる。
フェミニエロたちはなぜ男を捨て女として生きるのか? 両性具有ヘルマアフロディテはなぜ生まれ来るのか?
彼は取材し物語を創造し教授に聞かせてはその課題にはまり込んでいく。そう、コレは自分自身を探し見つけ出す課題でもある。
トランスセクシャルの現代の娼婦、17Cのカストラート、女装司祭、去勢されたギリシア神話の両性具有神ヘルマアフロディテ・・・
彼らの語る物語と私たちのしる歴史と事実。それらに触れるたびにシルビオはそこから途方も無い物語を語り、無意識に彼ら「水の卵」に無限の可能性があることを証明している。
その物語はどれも報われぬ体と性と愛の物語だ。男でありながら女になった彼らフェミニエロの起源はシルビオの手によって神話の世界にまでさかのぼる。
それがいかに苦悩に満ちた愛と背徳の物語であったとしても、全ては神々、つまり世界の創世と同時に生まれでた「種」であり存在し続けたのだ、それがいかに異様に見えようとその存在は人間にとって水と同様必要不可欠であるに違いない。
いかなる存在も、いかようにも生き変化し交わり続けることができる可能性を、私たちは持っているのだから。

人の数だけ真実があり、出会いの数だけ物語が生まれる。
だから私たちはどんな苦悩があろうと裏切りに会おうとも、生きていける。

どれほどの裏切りも、私自身が裏切らない限り私は永遠にこの水の世界で生きていけるのだと。


ヘルマフロディテの体温
ランダムハウス講談社
小島 てるみ

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『ヘルマフロディテの体温』/小島てるみ △
ううむぅ〜。雰囲気は、悪くないんだけど・・・。 どうも、合わなかったですな・・・。表紙の絵が『ドグラ・マグラ』っぽくて雰囲気出てたし、『ダ・ヴィンチ』の広告を見たときは、これはいいかも?と思ってたんだけどなぁ。性別の問題に絡むと、非常に難しいよね・・・。 私は性別に関する問題には、拒否感はないつもりだったんですが、やっぱ古い人間で小市民すぎるのかなぁ・・・。 ...続きを見る
蒼のほとりで書に溺れ。
2009/06/02 22:07

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
空蝉さん、ありがとうございました(^^)。
ギリシャ神話やキリスト教にあまり詳しくなく、小心で小市民な私、一応頑張ってみたんですが(笑)。
やはり、空蝉さんの造詣深い文章には及ぶべくもなく…(泣)。
フェミニエロたちの持つ「無限の可能性」、もしその可能性が最大限に発揮されるとき、旧来の人間はどうなっちゃうんだろう・・・という一抹の不安がよぎったりもしたのでした。
水無月・R
2009/06/02 22:24

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