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zoom RSS 『紙魚家崩壊』 by 北村薫

<<   作成日時 : 2009/05/15 13:02   >>

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タイトルのなんだかおどろおどろしい雰囲気とは裏腹に、中身はなんとも軽いタッチのこじゃれたミステリー短編集である。
軽い、といっても決してチンケな安っぽい作品というわけではない。
全体を通していえること、それはどれもどこかが「崩壊」しているということ。そう、このタイトルのように、表紙の家のようにありえない形でありえないものが現実にありえるギリギリのところで崩壊している。

崩壊するものは何か。
現実、己の存在、自我、理性、物質、居場所、論理、常識・・・日常。

少し壊れた変人たちが織り成す物語はやっぱり少し奇妙奇天烈で、凡人である(と信じている)私たち読者には
見世物小屋を覗き見するかのようなスリルと興味がせきたてられる。

世間話をするように語られる軽快なノリ。
ヒソヒソ話を耳打ちされるような秘密めいたお話。
時にはグチを、時には自慢話を、時には駄洒落を程よくミックスした多種多様なショートストーリーたちが
それぞれの個性を放ちながらも全体として上手く溶け合っているから不思議である。

何しろ最初からして、私たちはその題名どおり溶け込んでしまう。

都心に一人暮らしをする平凡なOLがコンビニで偶然見つけた雑誌の漫画家の絵に虜になる。コピーしてはホワイトで修正加筆を繰り返し、現実の同僚たちを見立てていくうちに虚像と現実が曖昧になり溶け合っていき・・・ 『溶けていく』

そのほか、ここに収録されている物語は、確かにミステリーではあるのだけれどどれもなんてことはないネタであったり
たいしたトリックも謎もない。
謎が解明されて物語が終結するミステリーではなく、その煮えたぎらない結末と読者に解釈を委ねた、ある意味無限の広がりを持たせるファンタジックな物語とさえいえる。
(もちろん、オチのある章もあるのだが)

熱心な書籍収集家の夫婦、紙魚家で起きた密室殺人。そのカラクリがとかれるや否や「崩壊する」紙魚邸宅に舞い戻った夫のその後はいかに?
密室殺人を実現せんと老いたミステリー作家が死をもって作り上げたその密室は、果たして完全犯罪となるのか?

このおにぎりを握ったのは誰か?男がサイコロを持ち歩くのは何故か?

傍目には他愛のないことに思わぬミステリーやファンタジックな物語が潜んでいるものだ。
本書はそんな遊び心を書き立ててくれる、まこと優雅で奇妙なミステリー集である。

<収録作品>
「溶けていく」
「紙魚家崩壊」
「死と密室」
「白い朝」
「サイコロ、コロコロ」
「おにぎり、ぎりぎり」
「蝶」
「俺の席」
「新釈おとぎばなし」

紙魚家崩壊 九つの謎 (講談社ノベルス)
講談社
北村 薫

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