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zoom RSS 『学校で愛するということ』 by 中森明夫

<<   作成日時 : 2009/07/06 12:59   >>

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冒頭で「僕」が語りかけてくるように、学校というのは誰もが必ず、あたり前のように通い青春時代を過ごす場所である。ご飯を食べるように日常的に、家族のように身近に、洋服のように楽しみだったり面倒くさかったり、得意だったり苦手だったり好きだったり嫌いだったり・・・。きっとそこに通った人の数だけ学校というイメージは存在し、人の数だけ出会いがあるのだ、当然「学校は○○するところ」と限定することは出来ない。
ただ本書を読んで、一つだけ解ったことがある。大人となって自立していく前の少年少女に学生という身分を与えてくれる絶対的な存在、彼彼女らが入学し、青春を過ごし、去っていく。それでもただひたすら迎え入れ、見守り、見送るだけの、けれど絶対的な存在だということ。変わっていくのは「学校」に通い成長してく少年少女たちで「学校」は昔も今もドコでもひたすら「学校」で変わることは無い。人は変わってしまう、外見だけでなく心も身体も日々成長し青春時代の様々な思い出を懐かしんだり微笑ましく語ったり、切なくかみ締めたり。時には哀しい記憶を封じ込めて新しい次の一日を生きていく、人間はそんな力強くも不安定な存在だ。
だからなのだろう、絶対的な場所「学校」が「愛」というこれまた絶対的な存在と結び付けられたのは。

極普通のレベルでどこにでもいる少年少女が通う希望第一高等学校(通称キボコウ)の4月の校門がこの物語の入り口だ。「学校」のあらゆる場所も歴史も生徒も先生も知っている「僕」が私たち読者をキボコウの中へ招きいれ、個性豊かな幽霊3人の目を借りて何人もの生徒たちの青春を、私たちは見ることになる。
時代遅れのバンカラ男子・ゲンノショウ、一昔前のコギャルのユカタン、イケメン男子のニシキ。
学校で死に、3日以内に昇天できず地縛霊(学校霊?)となった元キボコウ生の3人は学校のあちらこちらで繰り広げられる小さなドラマに共感したり嘆いたり、喜んだり悲しんだりする.
それでも生きている生徒たちに何も出来ずただ見守るしかできない彼らは「学校」同様、歯がゆいばかりだ。

空に一番近い場所「屋上」で淡く切ない恋かも知れない想いを交わす同級生、先生に恋心を抱く女生徒、生徒の見つけたロックンロールのMDに友人の死を想う卒業生かつ先生、音楽室のマドンナ、保健室のセクシー看護士、女の子が大好きな漫研の女の子、スケッチブックに忍ばせた想い人、万年補欠の野球部員とたった一人のチアガール、放課後のセックスにイジメ問題・・・
お決まりのキャラがお決まりのパターンで、学園モノフィクションにはありがちなありふれたストーリーが展開する。
けれどどの話もよくよく考えてみれば・・・リアルにはなかなか無いドラマ仕立てのストーリーでもある。
現実の学校生活は何も起こらない退屈な日常が繰り返され、だからこそ学園ドラマは飽きることなく生まれ続けるのかもしれない。・・・けれど同時に。毎日何かが起き、彼・彼女に出会い、別れ、誰かが何かに心を動かされている。そうした思い出を誰もが学生時代に持っているからこそ舞台は「学校」を離れない。

そんな愛すべき「学校」の一つ、ここ希望第一高等学校「キボコウ」で行われる小論文発表会の題目は『学校で愛するとうこと』。 
生徒たちは思い思いの小論文を書き、その意味と答えを見つけていく。
その答えは大人となった卒業生の数だけ、現在進行形の学生たちの数だけ存在するのだろう。
ただ、一つだけ共通しているのは・・・愛するということ、それが永遠で、絶対で、信じることの出来る存在であるということ。
一方的な「恋」でもなく、一時的な「憧れ」でもなく、揺るぐこと無い唯一無二の絶対的存在、もしかしたらソレが「学校」というものなのかもしれない。

「愛ってしんじることでしょ?−そう、この世にたった一つ、信じられるものがあればいい。そしたら、きっと私は、救われるー。
私は救われました。たった一つ、信じられるものを見つけて。」

こう語った女生徒はその学校で『悲劇』を迎えてしまうけれど、それでも「学校」は何もして上げられない。ただただ存在し続けるだけだ。
けれど、生徒たちは変わる。唯一ゆるぎ無い絶対的存在「学校」が地盤にあるからこそ変わっていける。成長していける。

ここ、キボコウがどのように誕生し、どのように育ち、どのように生徒たちを迎え入れ見送り続けてきたのか。
それが最終章でかたられる。
時が移り場所が変わり人が変わっても、教える先生と、教わる生徒と、語り合う友達がいればそこは「学校」だ。
生徒の数だけしみこんできた生徒の思い、喜び、楽しみ、悲しみ、怒り、恨み、憎しみ・・・そして、愛。
その一つに私の思いも存在する。

学校で愛するとうこと。その答えをかつて通った「学校」の思い出に、見つけることが出来るかもしれない。


学校で愛するということ
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中森 明夫

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