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zoom RSS 『隣之怪 病の間』  by 木原浩勝  (幽BOOKS)

<<   作成日時 : 2009/08/24 08:47   >>

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全篇語りの怪談実話シリーズ第3弾。
多少の長短やジャンルのばらつきはあるものの、「小説」というフィクション・お話を読むことの多い私にとって、ノンフィクションや実話・体験談などを手に取ることは少ない。ましてや言い張るもの、信じるものにとってだけ「ノンフィクション」であるオカルト本や怪奇現象や体験談を扱った「実録」モノは人に進められでもしなければまず読むことはない。
そんなわけであまり気が進まずに手に取った本書だが、思いもよらぬオモシロさとコワサにいつの間にか引き込まれてしまった・・・そう、この吸引力こそ何百年も人を惹きつけて止まないホラーの底力なのだろう。

実のことを言うと最初の何篇かは(ある意味予想通り)落胆に終わった。恐怖小説と呼ぶには怖さが足りず、ハリウッド映画のような迫力もホラー小説のような劇的な展開もドラマチックな人間模様もない。
平凡な日常・・・それにほんの少し変化があったりなかったり。現実だってそんなものなのだから、実録というからにはそれが当たり前なのはいたしかたない。それを差し引いても、どこかで聞いたような怪談話、予想のつきやすいオチが続き、少し物足りなさを感じつつ捲るページがしばらく続く。
しかし・・・。
いつの間にか私のその捲る手は速度を増していることに気がつく。
これは「怪談効果」とでもいえばいいのだろうか?
ホラー小説でもなく、恐怖小説でもなく、あくまでも「怪談」。「〜小説」をつけるべきでは、ない。

怪談は文字通り怪奇な出来事や体験を談話するわけで、人は過去に起きた(とされる)出来事をより恐ろしくよりリアルに劇的に語られ聞き入るものだ。勿論これには法螺話ありきで全てが事実とは限らない・・・が、そこは信じたものにとっては全てが真実であり、それが事実であったかどうかを追求するのは野暮というもの、暗黙の了解であろう。
逆に小説はというと、これは100%フィクションであることが前提にあるのだから、当然、過去にあったことでも体験されたことでもない。これは作り話だから、といえば全てそこで打ち切ることが出来る完全に安全なのだ。
それを読む間、読者は想像力を自由に働かせそれに比例して恐怖したり驚愕したりするが、読み終わればそこで終わる。勿論現実と混同して恐怖する人も多いかとは思うが、これはフィクション。所詮は作り話という一言で読者はいつでも恐怖を打ち切り現実に戻ることができるのだ。

けれど、怪談は違う。
本書のように劇的に恐ろしい話や驚愕するような体験談は意外と少ないし、天才的な陰陽師やエクソシストも登場せず、恐怖する主人公たちは聞き手となんら変わらない、極普通の人間が殆どだ。必ずしも納得のいくオチはなく、うやむやに夢のように終わってしまう尻切れトンボも中にはある。しかしだからこそ、リアルなのだ。
現実が昼ドラのように劇的でないように、怪談の多くはわりと稚拙な表現、ありふれた恐怖の度合いが多い。ゆえに私たちはそれを読み聞かせられるうちは「これは過去のこと」として気楽に聞き入ることができる。しかしその晩一人薄暗い天上を見上げたとき、真夜中に一人でトイレに行かなくてはならないとき、突然得体の知れない物陰や物音を認識したとき、私たちは「もしかしたら私にも!?」というこの上ない臨場感に満ちた恐怖を味わうことになる。
そう、怪談は語り手の語り。実際はどうあれ、すくなくとも小説とは違いノンフィクション(実際に起こった=起こりうる)なのである。
これは本当の話。これ以上怖がらせることの出来る言葉があるだろうか?

どれもショートショートで粗筋を言ったらオチまでわかってしまいそうなので内容にはふれまい。
ただ、つまらない、退屈だ、と読み進めていた私の手が、いつの間にか次へ次へとページを捲り始め、いつの間にかすっかり引き込まれていたのだからそれだけのモノがある。

夏の寝苦しい夜、一人で眠れず過ごす機械も増えることだろう。
都会とは違う、古い旧家に帰省するかたも多いだろう。
いつも小説ばかりを読んでいる方も、たまには「実録」のホラーを体験してみてはいかがだろうか?


隣之怪 病の間 (幽BOOKS)
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木原浩勝

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