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zoom RSS 『太陽の庭』 by 宮木あや子

<<   作成日時 : 2009/12/22 13:25   >>

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最古の長編小説『源氏物語』にしても軍記ものである『平家物語』にしても、いや神話や民話、伝説に至るまで
人間はいつでも己の取り巻く現実を様々な言葉をつむいで「物語」に仕立ててきた。
それは幸せな時間、大切な人との会話、または悲痛な思いや別れなど自分の体験し得る物語だけではない。
時には自分の到底手の届かない富みや栄誉、地位名声を憧れと羨望の目をもって夢物語のように描き、
時にはそれらに嫉妬と憎悪の目をもってそれらを誹謗や中傷の的として世に暴露する。

そして往々にして・・・ただ純粋に生きてはいない私たちはただ憧れたり無いものねだりするよりも、それらの没落ぶりを
あざけったり憐れんだり、嘲笑するために物語にかきつけるのだ。
栄枯盛衰、諸行無常とはよくいったもの。ドラマティックに劇的にそうした没落ぶりが著された物語を、
私たちはいち読者として消費し、人として消化する。
人間は集団生活を送る限り 常にカリスマ性とパワーと特権をもつ「スター」を必要とする生き物だ。
スター、それは古くは王や将軍といった為政者であり、時には光源氏のような才色兼備のアイドル的存在、そして常に存在するのが
教祖である。「ジーザスクライストスーパースター」という題名がふと頭に浮かぶ。
「神は死んだ」といわれたかの国でも、文明開化を経て化物たちが姿を消した日本でも人は常にスターを必要とし、その最たるものは「神」である。特に日本は宗教戦争でもないのに戦争で天皇という「神」を作り上げ、終戦と共に神を人間に降格させた興味深い国だ。

終戦は神を殺し、敗戦で何もかも失った日本はその後目覚しい復興を遂げた。金融、財政、外交、産業、工業、商業・・・その多大な発展の裏にもやはり神が存在した。神という名のスーパースター。本書に描かれた永代家はそういう血筋の家である。

東京の地図にも載らぬ不可侵のその一角に、「神」と崇められる一族が住まう屋敷「永代院」がある。
法もメディアも立ち入ることの出来ない院の中、世間から隔絶された屋敷の中にいるのは「神」である家長と、純粋培養された「神」の血を引く子供達と、跡目候補である彼らを産み熾烈な争いを繰り広げては果てていく女達・・・そしてそれを静かに見守る選ばれた使用人が何人か。
彼らの生き様や永代院の有様が各章、彼らそれぞれの視点と人生によって語りだされるため時代も場所も前後するが、それでも物語りは静かに彼らの破滅へと近づいてく。 戦後復興期の日本が必要とした「神」永代家が破滅する、必要とされなくなる運命の日が彼らと物語の結末であることは最初から決まっている運命である。



一般人にはその存在を決して知られることなく、政財界からは「神」と崇め奉られている、永代院。屋敷内では、跡目と寵愛を巡る争いが絶えず、子供たちは常に死と隣り合わせの生を生きている。愛と自由を知らない「神の子供たち」が「最後の日」に見るのは、神の祝福か、それとも警鐘か―。『花宵道中』の宮木あや子が描く、現代の“宮中小説”。


太陽の庭
集英社
宮木 あや子

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『太陽の庭』/宮木あや子 ◎
かつて私は『雨の塔』を読み、その儚い美しさに、息苦しいまでの孤独に、とても心を打たれた。 本作『太陽の庭』は、その『雨の塔』と同じ世界に存在する、別の物語である。 源氏物語の現代版のような物語が、宮木あや子さんによって語り始められる。 だが、次第に物語は、違ったものに変わっていく・・・。 ...続きを見る
蒼のほとりで書に溺れ。
2010/06/21 22:24

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
空蝉さん、こんばんは(^^)。
自らの手によって神を失った、この国・この民は、どこへ流れつくのだろうかと、滅びゆく〈国〉の姿が見えるような気がして、哀しい物語でした。
ですが、こういう物語は結構好きですね。
宮木さんには是非、ままならぬ物語を描いてほしいと思っています。
水無月・R
2010/06/21 22:32
トラバ&コメント、ありがとうございました。
ほんと、私は宮木さんという作家に毎回毎回楽しませていただいています。デビュー作「花宵道中」を超えるものはまだないかと思ってしまいますが(苦笑)いやいや、それは私の好みの問題ですね。
空蝉
2010/06/23 19:28

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