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zoom RSS 「幽霊屋敷」の文化史 (講談社現代新書)  by 加藤耕一

<<   作成日時 : 2010/02/09 09:11   >>

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日本人にとってのお化け屋敷とはハレとケで断絶された異空間である。もちろん様々なタイプが出来ている今日、これをもって日本のお化け屋敷、という基準を定めるのはナンセンスだが、少なくとも私の幼少期のお化け屋敷といえばひとたびその建物の中に足を踏み入れれば墓地や牢獄、井戸などが在り、人魂が飛び交い「恨めしや〜」という白装束の幽霊がおどろおどろしく登場する、「屋敷」ではない別世界が広がっていた。つまりそれは怪談話の世界の再現、誰かの体験談の可視化である。
これに対して西洋の、ことさらヨーロッパの幽霊屋敷(ホーンテッドハウス)は屋敷の中はあくまで家(ハウス)でありどこまでも即物的だ。物語性や情緒に訴える弱々しい幽霊よりも、驚愕するようなトリックや恐ろしくも幻想的な映像が視覚・知覚的に侵入者を恐怖させる。これらは『化物屋敷 遊技化される恐怖』 橋爪紳也( 中央公論新社) により詳しいので是非一読して欲しい。

さて、本書『幽霊屋敷の文化史』は日本と西洋のお化け屋敷の違いを語るものではない。むしろ西欧の幽霊屋敷、つまりはお化け屋敷に準じるものに焦点をあて、その歴史と発展、ことにゴシックという文化との関連性を丁寧に解りやすく解説した紹介本である。
ではなぜこんな前置きを書いたのか。
それは先に言ったように、即物的でよりリアルタイムな「体験」を重視する性格が西欧の幽霊屋敷には根付いている、大前提になっているからだ。
本書には幽霊屋敷がいかに発生し、興行やゴシック建築、ホラー文学などと結びついて発展を遂げたかが歴史を追うようにして紹介されるのだが、その発展に寄与したものは全て現実ありきであることに気がつくだろう。

まず第一章でTDLのホーンテッドハウス(幽霊屋敷のアトラクション)の様々な仕掛け。
第二章でシェイクスピアをはじめ墓地派詩人たちによるホラー文学や、ゴシックの持つ意味の変容と幽霊屋敷との結びつき。
中でも18Cの思想家エドマンドバーグの著作から抽出された崇高と恐怖の関係性、ジェイン・オースティンの作品に見られるゴシック・ホラーというジャンル、ハーンやフロイトからは懐古主義・異国情緒といったメランコリックな意味合いなど
ゴシックと恐怖の結びつきがいかに人々を戦慄させ魅了してきたのかが非常に興味深く、的確に紹介されている。
第三〜五章ではイギリスやフランスで興行としての幽霊屋敷がいかに広まり嗜まれたか。幻影技師による映像的トリックなどを中心に様々な趣向が紹介され、
最終章、アメリカで完全に興行化した幽霊屋敷がホーンテッドハウスとしてディズニーというファンタジーの中で再生し、東京DLにて一つの完成形をみる、という形で幕を閉じる。

別に日本のお化け屋敷や「怪談」が精神的で幽玄。西欧のホーンテッドハウスが即物的で商売上手という 幽霊文化の優劣をいっているわけではない。
しかし日本の幽霊が足を無くした様には西欧のそれはならなかった。 
それはもしかしたら日本の幽霊たちのようにかすれゆく弱さを、西欧のエンターテイメントが許さなかったからではなかろうか?
商業化するにあたり彼ら幽霊たちは より恐ろしくドラマチックで劇的で物質的でなくてはならない。
か弱い線香の煙のように柳の下で揺らめいているわけには行かないのだ。

最近の遊園地にある「お化け屋敷」はどんどん「恐怖」ならぬ「驚怖」に傾いている気がする。
ゾゾゾ・・・と身震いする怖さを味わう暇なく、アトラクションのように大仰な仕掛けがおそってくる、演出してくる。
需要があるから供給がある・・・と考えれえば、戦後西欧の文化が蔓延していた今の日本に
かつての古風な「お化け屋敷」が滅びるのは時間の問題かもしれない。

先日浅草の『花やしき』のお化け屋敷が閉園を迎えた記事を読み、ふとあの寂れたお化け屋敷にもう会えないのかと思うと
すこし寂しい気がした。
本物のお化けが出たなどの声が高かった有名な昭和のお化け屋敷。
またひとつ、昭和は遠くになりにけり。である。



「幽霊屋敷」の文化史 (講談社現代新書)
講談社
加藤 耕一

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