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zoom RSS 『トトの世界』by さそうあきら

<<   作成日時 : 2010/07/15 12:37   >>

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あちこちでこの作品が話題になり、感動した、感銘を受けたなどと書いてあるモノだからかなりの期待を寄せて読んだのだが、正直期待しすぎたのだろうか?少々がっかりした。

題材としては非常に興味深く、現実に起きている事件にも例があるためリアリティがある。

猟奇殺人犯(田野井)に幼児期から15年もの間、犬とともに完全幽閉されてきた野生児が、犯人逮捕をきっかけに外の世界へ解放・逃亡する。
偶然発見した少女(マコト)は彼をトトと名付けて保護し、ヘレンケラーのように言葉を教え愛情を注ぐが、彼女もまた誤報道により家族が離散した心の傷を負っていた。

次第に心を開き急激に「言葉」を覚え人間に近づいて行くトトと中心に、マコトと母親、そして別居している父親と、真相を追う記者(山形)たちもまた絆を取り戻して行く。
しかし警察とも報道ともちがう何者かがトトを執拗に追撃し、マコトたちは命がけの逃亡を試みるが、
その先には恐ろしい悲劇と真実が待ち構えていた…。

と、現実の猟奇的な事件なら犯人の足がかり、真相解明までの糸口などはこの程度だろうなという意味で半端にリアリティがある分、ミステリとしては物足りない。
情緒的、感傷的な物語としては 人の悲しみや苦しみがドンと伝わって来ない表現の拙さがある。
キャラクターに魅力がなく台詞やシーンに「見せ場」がないから感動にはほど遠い。

後半クライマックスで野生児「トト」の出生とその母親の悲劇が明かされる辺りは
さすがに劇的で身震いするほどの衝撃を受けたが、それはあくまでも猟奇的な事件に対する恐ろしさ、人がこれほどまでに狂うことが出来るのかという意味であって 当事者(登場人物)の感情レベルではない。
そう、この物語の中心であるトトが真実を「言葉」として、人間として完全に把握しない限り 
読者は本当の感動も衝撃も受けはしないだろうと、思うのだ。


マコトは夫を信じるきることが出来なかった母と、信じていた娘を捨てて去っていった父の間で一人孤独に世界を憎み不信に陥っている。だから自分以上に悲劇的な過去を背負った野生児、トトの無邪気な(笑)と澄み切った眼に戸惑いと救いを見いだしていく。

15年に渡る監禁と、ある恐ろしい事実。
トトがどれほど残虐な環境を強いられてきたか。それを言葉で理解する人間(マコト)と 理解しない故に平然と笑って生きているトトと、どちらが幸せなのか?
田野井はトトを解放する際、この世界を「言葉の地獄」と言い放った。
いつかトトが言葉の先に真実を…この事件の発端となるある恐ろしい事実を識る、その時こそこの世界への復讐が完結するのだと彼は呪いをかけた。

聖書には「はじめに言葉ありき」という。

言葉は人間を作り、人間は愛と憎しみを同時に獲得する。
では、言葉を失ったとしたらその時トトはまだ人で居られるだろうか?
言葉を失った彼は、まだマコトを愛することが出来るだろうか?

答えは最後に出ている。むろん、この物語での答えは、だ。
おそらく本当の答えなどはどこにもなく、言葉でそれを紡ぐこともまた出来ない。
既に言葉を失いことの出来ない私たちは、田野井が地獄と言い放ったこの言葉の溢れる世界でいかに愛を失わずに生きることが出来るのか?
いかに世界を、言葉を、自分と人を許すことが出来るのか?
ただそれだけである。


トトの世界 (1) (Action comics)
双葉社
さそう あきら

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