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zoom RSS 『小説を書く猫』 by 中山可穂

<<   作成日時 : 2011/04/05 14:16   >>

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最近、お気に入りの小説家のエッセイ集を読む機会が多い。
小説家のエッセイには大きく分けて二通りあって、それは小説を書くスタイルと重複していると思う。

一つ目のタイプは(といっても実際には何タイプもあって2つだけに分けるのはおこがましいのだけれど)作家自身と登場人物が全くリンクしてこないタイプ。
ファンタジーやSFなど物理的にリアリティが無い、という意味だけでなく、自分を慰めるためや自虐的に落ち込むために書くのではなく、読者にこう思われたい、読者がこう感じてほしいという願望のもと作り出すものが多く、物語や構成、キャラクターそのものに重きが置かれることが多い。

実は先日読んだ一人目の作家がこのタイプで、その名を伊坂幸太郎という(笑)
彼は読者が「この小説を読んでこんな気分になったらいいな」という夢を持って書いている。
(ここでかくのも何なので、それについてはまた別の機会に)

もう一つのタイプは作家自身を登場人物に反映させて思いを昇華させるタイプ。
いわゆる私小説というものだ。これが今回私が読んだ中山可穂『小説を書く猫』である。
中山氏は自身がレズビアンであるということを公言しているが、それがどれほどの血肉を裂くほど狂おしい痛みと喜びとを伴うものであるのか、その小説から伺うことが出来よう。
どれほど報われずとも、傷を伴うとも恋をせずにはいられないように、そこから絞り出して物語を生み出さずにはいられない。そういう傷だらけの作家なのだ。

とはいえ、何もストイックでギラギラして、時には気障ったらしいカリスマ女流作家という訳ではない。
失礼! でも中山氏が七輪で炙った魚の美味しさを、旅先のしょうもない失敗談を、締め切りに追われてぐでんぐでんになっている逃げ腰を、いい女をめざとく探しているいじらしさを読んでいると、なんだかとても応援したくなるのだ。 
「中山先生ってすてき〜!」ではなく。「がんばって!」とか「しょうがないな〜もう。」とか「またかよ。」とか。そんなあきれたり優しく見守ったりしてあげたくなる作家なのだ。

彼女はこれからも恋を、大恋愛をし、愛にかまけ、嫉妬して、喧嘩して、失恋し、絶望しては傷ついて。
その傷から出た血と肉を文字にして物語を紡ぐのだろう。
そうやってどうにかこうにか、再生をするのだ。
女性にこういうのは失礼だが・・・歳を重ね、出会いと分かれ、経験を重ね、
これ以上無いほどの人(女)との思い出をあたため。
彼女の作品は年々狂おしいものから静かなものへ、平穏なものへ、そして優しいものへと少しずつ変化していると思う。けれどそれは作家としての収束でも終焉でもない。
そう、中山氏の作品はいつだって「再生」の物語だった。

彼女は後半を大きく「近況」報告で締めくくっている。
最近 京都に引っ越してきたこと、腹立たしい出来事に憤慨しているということ、
そしてファンサービスも露出も今後はいっそう減るであろうということ。

作家と読者は、ファンは、ペンと文章だけでつながっていればよいという、覚悟。

私は彼女をこれからもずっと見守っていきたい。そう、切に思った。


ファン待望、幻の作家、初のエッセイ集! 恋愛、執筆、旅について…… 『猫背の王子』から近況まで、18年の作家生活を網羅 孤高の作家は日々、爪を研ぎ、肉球をみがく。 しめきり?……にゃんだ、それ? わたしはいまだに、この年になっても、ということはおそらく死ぬまで、自分のことを人間よりは猫に近い生き物だと思っているのです。 猫を見るととても他人とは思えない。 人間とは結局最後まで馴染めない。 猫には人間の言葉がわかるけれど、人間は猫語を理解できません。そこに猫の孤独があり、哀しみがある。 (「あとがき」より)



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もっと欲しいにゃん♪(´-ω-)♪ http://ktjg.net/index.html
ぷぅにゃん
2011/11/20 09:08

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