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zoom RSS 「キミのかけら」by高橋しん

<<   作成日時 : 2011/12/05 10:42   >>

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世紀末を舞台にした物語は多いが、その殆どは「明るい未来」ではない。
人間による環境破壊や愚かな戦争(主に核の使用)による人類の壊滅的惨状が描かれた世界がほとんどで、地上で生きることが出来なくなった人間が地下や残された僻地で細々と争いながら暮らしている、というものがおきまりだ。
本作もその一つ。
科学的文明が過去の遺物となり太陽が伝説と化した雪に埋もれた国。「外の世界」から壁に分断され光の無い極寒の地で、国民は夢も希望も未来も期待せず貧しい暮らしをし、戦族は反乱を起こし、政族は王族から権力を奪い…乱世となった国。
その国の王女で笑うことが出来ない欠けた存在「ヒトガタ」、イコロが本書のヒロインである。
彼女は戦族に襲われたところを記憶をなくし続ける不思議な少年シロとともに、既に失われた温かい光をもたらすという伝説の「太陽」を求め旅に出るのだが、その旅は長く苦しく前途多難に満ちたものとなる。

人はなぜ戦い争うのか。なぜ身分があるのか。なぜ貧しいのか。
欠けたそんざいであるヒトガタはなぜ生まれたのか? 滅びる運命ならなぜ人は発生したのか?
太陽とは何なのか? なぜ科学が破綻したのか? 巨大なクジラはなんなのか?
様々な謎と不可思議な存在をふんだんに登場させながら物語は進む。

天才的頭脳の持ち主とはいえ幼く非力で天然な王女イコロは王族の証であるカケラを手に、太陽さえ手に入れれば世界を国を救えると信じて旅を続けたわけだが、その太陽と、壁の外の世界と、失われた過去の力(科学)が果たして人々にどのような物をもたらすのか。その鍵を握る王族のカケラとは、ヒトガタとはなんなのか?・・・それがシロの秘密でもあり、物語のクライマックスにようやく明らかとなる。

実はこの作品この世界には最後の最後まで謎のまま、あやふやに、「あとはご想像にお任せします」的に終わらせている部分がかなりある。
各章の冒頭で何度も何度もしつこいくらいにこの国と伝説とあらすじの説明を繰り返されるのだが、
王女イコロの友達シロを含めこの国とそのの世界と太陽の種明かしはされるても、その細かな説明も順序だった経過も、漠然としか語られない。
だから読了感はすっきりしない。すっきりしないけれど、それでもラストには圧倒され感動し、納得してしまった。こういうのを勢いにのまれたというのだろう。


私がこのような世紀末的な物語を始めて読んだのは「風の谷のナウシカ」だと思う。
あの世界では人々が必死に巨大化した蟲や腐海と戦い生き延びようとたくましく戦っていた。が、しかしこの作品では誰もが無気力に、希望も無くその日暮らしをしているのである。
誰も王権復古など願ってはいない。未来にも王女にも期待等していない。
友達も家来もいない、笑うことも出来ない孤独なヒロインがともに歩むのは、異常な戦闘能力をもつ泣くことが出来ない不思議な少年だ。 
つまるところこの物語は、この少年の存在意義・・・なぜ彼が生まれたのか、作り出されたのか・・・という、根本的な部分が全ての出発点であり終着点になっているのだろう。
その問いはふだん考えもしない私たちの、そして彼らの心にもそのまま問いかけることになる。

争いがいつの時代も絶えない繰り返しの歴史。愚かな種族。それなのに人はなぜ存在し続けるのか。

繰り返す王女の叫びにその答えを見つけることが出来る、そう信じている。



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高橋 しん

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